2008/09/04

ブリジット・ライリー&ピーター・ドイグ展@パリ市立近代美術館





会期末が近い、ブリジット・ライリーと、ピーター・ドイグの二つの展覧会を観に、パリ市立近代美術館に行きました。ここは、このブログで紹介した「ホテルエヴァーランド」のある、現代美術館のパレ・ド・トーキョーと対面しているというか、全体をパレ・ド・トーキョーとするならば東翼の建物です。

通常は、常設展示をしている空間がピーター・ドイグの展覧会となっているので、市近代美のコレクションを楽しみにしてきた観光客は、少しの展示しかないので、残念だったかもしれません。

さて、最初にブリジット・ライリーの展示ですが、彼女の作品をまとめてみるのは、99年のロンドンのサーペンタイン・ギャラリーでの展示以来でした。ロンドンの展示は60年代70年代に絞ったものだったので、最近の作品まで含む回顧展を見るのは初めてで、その変遷を知ることができ、興味深かったです。

彼女は、最初スーラの模写をしているのですが、そこから急に白黒の作品へと変化し、次に色彩を取り込むと共に、尾形光琳の影響も受け、波状のモチーフも採用する。それで、最終的に出てきたのは、老マティスの切り絵のような平面作品。当初の目がくらくらするような作品から、最後には単純な形態の繰り返しでありながら、しっかりとした造形性のある作品へと変化していて、私自身は現在の作風が好きです。

 次に、ピーター・ドイグ展、この作家は若い人に人気があるのですが、私と同世代スコットランド出身だけど、トリニダートの移転のあとのカナダでの滞在が長くて、モチーフには、カナダの森林を描いたようなものが多い。ほのぼのとした平面作品というか、装飾的でもあり、水面の反映を好み、明確な形態というよりは、輪郭線は明確でなく、にじみ遠くから見るとクリムトのようでもあり、その不思議な雰囲気が人気があるのかもしれない。今年の春に、テートブリテンでの個展も開催され、その流れでの展示ということになるのだろう。

 とはいえ、一番気になったのは、展覧会の入口に飾られてあった作品のシリーズでBriey(Concrete Cabin)というもの、このコンクリート製の小屋は、ル・コルビュジエのユニテ・ダヴィタシオンのことを意味していて、僕が唯一訪問していないBriey-en-Forêtのユニテを描いたものらしい。そのほかに、Briey(Interior),Cabin Essence,Concrete Cabin2等の作品もある。ただ本人が訪問して描いたのか否かは不明だ。というのも、スキー場の絵など、長野の写真を参考にして描いたものとかがあるというから・・

この世代のイギリス人作家というと、ハーストらのYBAの作家たちを想起するが、彼らより5才ぐらい年長で、作風も違いYBAとして括られることはない。

 いままでル・コルビュジエの作品を描いた美術作品を幾つかみてきたが、このユニテを描いた作品は、森林との共生というか、原始の小屋としての建築とユニテの相似性を考えさせるのでは?と思ったりもした。

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