2008/05/31

ムーティのシューベルト@サンドニ音楽祭


ムーテイはムー帝様ぶりを発揮していました。




 以前の日記でも紹介したフランスの歴代の王様達の墓所でもあるサン・ドニのバジリカ大聖堂で、今月末から6月は音楽祭が開かれています。そのオープニングは、イタリアの名指揮者リッカルド・ムーティとフランス国立管弦楽団によるシューベルトのミサ曲第6番を中心とするプログラムで、コンサートは木曜日と金曜日の二日行われ、その金曜日の会に出かけました。
曲目は以下の通り
Porpora "Salve Regina."
Cherubini "Chant sur la mort de Haydn."
Schubert "Messe en mi bemol majeur."

G.Kuhmeier soprano
E.Garanca mezzo-soprano
T.Lehtipuu tenor1
H.Lippert tenor2
L.Pisaroni basse
B.Casoni 指揮  Choeur de Radio France
R.Muti 指揮 Orchestre National de France
 このコンサートは、大聖堂入り口のパイプオルガンの下あたりをステージとして、客席は身廊と側廊にもうけられていました。もしかしてと思い、しっかりとトイレを済ましてから会場に行ったのですが、案の定トイレはなく、外のカフェか公園に設置されている公衆トイレを使えといいます。夜になるとまだまだ底冷えするのに、開演前にワインやビールを飲んでいたら辛くなるでしょう。1000人以上は入場していると思うので、それなのに簡易トイレを用意しないというのは、いかがなものかと思いました。会場に入ると、席までを案内するボランティアがいて、彼らは品の良い生粋のフランス人高齢者達です。会場内を見渡すと、いわゆるアラブやアフリカ系の人々の姿が殆どなく、現在のサン・ドニの状況からすれば、異常のような気がしました。このような音楽祭は町おこしの一環で行われるのが常なのに、多くの移民系の人々が住んでいるサン・ドニの現状から乖離しているように思われたのです。この音楽祭は、誰のために行われているのだろうかか?そんな疑問をもってしまいました。
 コンサート自体ですが、はじめの二曲は会場が音は響くというよりは、こもるといった感じであり、なかなか聞き取ることが難しかったです。特に、小編成オケで演奏されるバロック時代の作曲家ポルポラのサルヴェ・レジーナ(幸いなるかな女王)は、若手メゾで人気が高いエリーナ・ガランチャによるソロだったのですが、その美しさを堪能するまでには至らず残念でした。
 しかし、メインのシューベルトになると、ムーティは音の響きを良く計算しながら、この大曲を指揮すると共に、オケも会場となじみ、こもりの弊害は少しずつなくなり、心地よい響きへと変容していきました。ある程度大きな音で会場が充満されることが必要なのかもしれません。また墨田トリフォニー以来のムーティは、相変わらずムー帝様で・・笑・・そのカリスマ性を強く感じました。まだまだ老いていなくて、先週聞いたアバドとの違いを感じました。
 ガランチャの他には、ソプラノのゲニア・キューマイアーやヘルベルト・リッパートらが共演したので、なかなか贅沢なコンサートでした。これで身廊のA席は60ユーロ、B席は38ユーロ、そんなに安い値段ではありません。これが移民系住民を排除するようなコンサートとなる、大きな原因なのでしょう。

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