2008/05/19

夜の美術館






 5月17日土曜日、パリの多くの美術館・博物館はLa Nuit des musées というイベントで、夕方から深夜まで無料開放されました。これは、ヨーロッパ各地でも行われているイベントで、普段は観光客で占領されている美術館、博物館が、パリ市民たちであふれかえっていました。

 私は、この日バスティーユでコンサートがあり、それが終わってから出かけました。コンサートが20時に始まり、22時に終了、それから博物館に行くというのは、いくら夏時間のヨーロッパでも、信じられないような時間です。とはいえ、有名どころの博物館は混雑が予想され、またバスティーユから、そんなに遠くないという条件を考え、一度言ってみたかった狩猟自然博物館Le Musée de la Chasse et de la Nature 行くことにしました。

 そして、この博物館のすばらしさを堪能しました。皆さんは、博物館学等で博物館の歴史を学んだことと思います。その際、博物館の原型として、ドイツの「驚異の部屋(ヴンダーカマー)」とか、イタリアの「ステュデイオーロ」フランス「キャビネ・ド・キュリオジテ」などが出てきます。この博物館は、まさに現代の「キャビネ・ド・キュリオジテ」と言えそうです。

 それらを創出した貴族達は、驚異なるものをねつ造することも多かったのですが、現代の場合はその役回りをアーティストが行うというわけです。展示は、従来の展示品に混じって、アーティストの作品が混じり合って展示されているというわけです。アーティストたちは、オリジナルの資料に負けないような作品=オブジェを作り、何食わぬ顔して展示の中に没入させるのです。

 4月に、ルーブルでのヤン・ファーブルの展示について、話しましたが、ここにもファーブルは作品を設置しています。しかし、ルーブルでの展示のように、それがアートであるという了解は、ここでは困難です。アートと博物資料とが混じり合っていて、それがアートであるなんて、多くの観客は意識もしないという訳です。

 それと興味深かったのは、ラ・フォンテーヌの「寓話集(イソップをもとにしている)」のキャビネットです。このキャビネットには、動物の寓話の文章と図版が示され、引き出しを引っ張ると、登場する動物の糞やら、テキストやらが出てきて、覗き窓を覗くとビデオアートが見えるという仕組みです。こういうものを作る、センスの良さはやはりフランスだなと思うところが大きいです。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

藤田の作品にも「ラ・フォンテーヌ」ってありますよね。