2008/04/28

セヴィリアの理髪師@パリオペラ座(バスティーユ)

カーテンコール
イヴ・クラインのニケ
ニキ・ド・サンフィルの作品
 美々の研究室に昨年美術や民俗芸能のDVDソフトを用意し、自由に見ることができることにしました。そのなかで、15枚ぐらオペラのDVDを用意してあります。そのなかにある、ロッシーニ作曲「セヴィリアの理髪師」は、フランスの女性映画監督コリーヌ・セローが演出したもので、2002年パリで撮影されたものです。それと全く同じ演出の再演がパリオペラ座であり、見てきました。

 この演出で、セローは舞台を中東のアラブ世界に移しています。オペラでは、オリジナルの台本の設定とは、全く違う設定にして上映すること(置き換え演出と言われます)が、良くありますが、この演出もその一つといえます。先日見たヴォツェックも同様に、置き換え演出でした。このオペラの原作はボーマルシェ、それをチェーザレ・ステルビーニという台本作家が台本に仕上げました。舞台は、名前にあるようにスペインのセヴィリアですから、レコンキスタ(キリスト教国によるイベリア半島の再征服)はどうなっているのかということになってしまいます。それはさておき、舞台装置はなかなか手のこんだもので、華やかなパリオペラ座の舞台を堪能できます。(是非皆さんも、研究室のDVDを見てください。)
下の映像はそのDVDと同じものです。ロジーナはジョイス・ディ・ドナートが歌っています


 先ほど再演と書きましたが、オペラは同じ筋同じ音楽のものを、色々な演出家によって再演出、再生産されつづける芸術です。また、実際には違う歌手で同じ演出で再演されることも多くあり、作品の同一性といった問題を芸術学的に考える必要性が出てくる芸術といえます。しかし、オペラファンはそんな堅苦しいことを考えるのではなく、単純に好きな歌手がなんの役を歌うのかという興味が優先することになります。今回のオペラでは、女性のメイン役=ロジーナを歌う、スペインのソプラノ歌手マリオ・バーヨへの注目が一番高かったと思います。この歌手は、今年の1月に、新宿の初台にある新国立劇場でプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」の悲劇の主人公ミミを歌い、喝采をあびました。私も、その舞台に接しましたが、本当にすばらしい歌手で、今回のロジーナの歌唱もすばらしいものがありました。

 しかし、オペラは好きな歌手がすばらしく歌えばいいというものではありません。指揮者がいて、他の歌手がいて、演出・舞台装置があって総合的に鑑賞するものです。そういう視点からいえば、今回の演奏は指揮者に大きな原因があって、私は十分に楽しめませんでした。ロッシーニの音楽には、ロッシーニ・クレッシュエンドつまりは、音を次第に強くすると共に加速することで、躍動感があり劇的な効果をもたらすのですが、今回聞いた音楽はおとなしめというか、平板で面白みに欠けたのです。それに、バーヨの歌唱はすばらしくても、それがロジーナという役にあっているかということも、多少疑問に持ちました。なかなかうまく自分の思い通りにはいきません。それでも、私は劇場に足を運ぶでしょう、こういった不満も糧にしながら、すばらしい上演に出会えることの希望は持ち続けているからです。


 パリオペラ座には、ロビーにアーティストの作品が展示されているので、その写真も載せることにします。

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