2008/04/09

ルーブル訪問-片桐先生を思い出す-



 毎月最初の日曜日と7月14日はルーブル美術館は無料開放されます。そこで、私もその恩恵を得るべく、ルーブルに行ってみました。昼過ぎから閉館までの時間をねらって行ったところ、15分ぐらい並んで入ることが出来ましたが、実際に入場してみるとものすごい人でした。実践の夏の旅行で何回か引率したときには、こんなに混んでいませんでしたから、少し驚きました。極めつけは、モナリザを一目見ようという人々で、通常の手すりとは別に制限されていて、フラッシュ禁止など知らんぷりで多くのひとが、世界で一番有名な絵を撮影しています。こんな状態では「モナリザ」をじっくりと鑑賞することなど不可能です。ところが、ルーブルにはモナリザ以外のレオナルドの作品だってあるのに、あるいはラファエロやカラヴァッジョといった有名画家の作品の前には、モナリザの前のような喧噪がないのです。それらの作品は、グランド・ギャラリーと呼ばれる、廊下のような場所に設置されているため、モナリザへの通り道となってしまい、忙しい観光客はそこにある作品をじっくりと見ないのです。モナリザの次には、ミロのヴィーナスに行かなきゃって感じなのでしょう。
 なんともったいないことでしょう。もっとじっくりと作品を見て欲しいのですが、そのなかで私は一枚の絵にたどり着くことが出来ました。それは、セヴァスティアーノ・デル・ピオンボという画家の作品で、ラファエロやミケランジェロ、さらにはレオナルドからの影響を受けた画家です。ちょうど、ラファエロの絵の隣にピオンボによる「聖母訪問」の絵が一枚あったのですが、私は特別な思いで見ることになりました。それは、一昨年亡くなった同僚の片桐頼継先生の遺稿がピオンボに関するものだったからです。この3月に出版された美学美術史学科の紀要に、その文章は掲載されたので是非読んでみてください。先生のマニアックな視線を意識することになります。
 私はといえばこの作品を前にして、構図の異様さを感じるとともに、有名なポントルモの作品との比較をしてみたくなりました。とはいえ、私のこの主題への興味は、ポントルモからというよりは、むしろその作品をもとにしたヴィデオ作品を創作したビル・ヴィオラに起因しています。この構図だとビデオにするのは難しいなと思ったのでした。こんな見方は特別かもしれませんが、一つの作品からいろいろなインスピレーションを感じることは、楽しいことと言えるでしょう。

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