2008/04/04

「モンマルトル日記」はじめます。

 美々に入学した皆さん、そして進級した皆さん、今年度私は在外研修の機会を得ることができ、この4月からパリにいます。私の留守の間の、美学入門は佐藤美由紀先生、美学研究は鈴木賢子先生にそれぞれ代講をお願いしました。二先生とも優秀な先生ですので、是非美学について一生懸命学んでください。 さて、私は4月1日に到着したばかりで、今はこれからの生活の準備をしている最中です。これから一年パリでの生活を報告していきますが、その報告を「モンマルトル日記」としました。というのも、私は今モンマルトルの丘に住んでいるからです。実は、私はモンマルトルよりも、モンパルナス周辺の方が得意な?左岸派(セーヌ川を下流方向に見て)だったのですが、はずみ?でモンマルトルの丘のアパルトマンを借りてしまいました。 私の好きなフランス人映画監督フランソワ・トリュフォーが愛してやまなかった、サクレクール寺院の直ぐそばにいるのです(トリュフォーの映画には必ずサクレクール寺院が登場するのです)。そこで、ここから日記形式で見聞きしたことを発信していきますので、楽しみにしてください。
 さて、その最初の日記として、有名な「洗濯船」や「ムーランドラギャレット」ではなく、ある近代建築を紹介することにします。それは、ダダイズムの詩人トリスタン・ツァラが住んだ家で、設計者はオーストリアの建築家アドルフ・ロースです。ツァラは1916年にチューリヒのキャバレー・ヴォルテールで、従前の芸術に対抗する「反芸術」を提唱したことで知られています。この運動は20世紀の前衛芸術を先導したものであり、芸術史上重要なのです。ここで紹介する住宅が完成したのは1926年で、既にダダイズムは終息し、シュルレアリスム運動に移ったころです。この時代の芸術運動については、六人部先生の講義でも学ぶことが出来ると思いますので、これぐらいにして、この建物を見てもらうことにします。 見たところ、どこにでもあるような建物に見えるかもしれません。ロースは建築において「装飾は犯罪である」と宣言したことを知れば、この建物の意味が理解できるかもしれません。見ての通り、この地区の他の建物と比べても、すっきりとしています。しかし、装飾的でないというのは、過去の様式に追随するものへの批判であって、それ自身が美しさを放棄したものではないということです。とはいえ建築のファサード(正面)だけで、それを感じることは難しいかもしれません。残念ながら、現在ここは博物館でも美術館でもなく、一般の人の住宅であり、私たちはその中に入ることが出来ないのです。 


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