2008/04/11

現代美術作家と美術館





 ルーブル美術館に行ったことを、一つ前の日記で書きましたが、ルーブルでは現代美術作家のヤン・ファーブルを招いて、大規模なインスタレーション展示が行われていました。題して「変容の天使」という展示だったのですが、リシュリュー翼3階の、オランダやフランドル、ドイツ絵画の展示室に、ファーブルの作品が大胆に展示されていました。ファーブルは、その名が示すように動物記のファーブルのひ孫にあたるベルギーの作家で、昆虫(特に玉虫)を用いた作品で知られています。また、オペラの演出をてがけたりするマルチなアーティストです。その作品は、一見グロテスクなものが多く、人間の生と死を考えさせるものが多いです。今回の展示では、ルーベンスの有名なマリー・ド・メディシスの生涯の目の前に、大理石で出来た墓標が大量に並んでいました。私は同様の作品を昨年のヴェネチアでも見ましたが、それよりも規模の大きい展示であることと、その作品の多さに圧倒されました。また、良くも悪くもルーブルがここまで、アーティストに対して協力的で、大胆な展示を行えたことに驚きを感じました。これと同じような展示の試みは、昨年ドイツのカッセルで開催されたドクメンタ展においてもありましたが、その規模が全くちがいます。
 ところでこのような試みは、最近パリで流行っているようで、オルセー美術館にも同様の試みを見ることが出来ました。それは、ドイツ表現派を導いたロヴィス・コリントの回顧展に、現代ドイツを代表する作家アンゼルム・キーファーによる、コリントへのオマージュ作品が展示されていました。さらには、モネの睡蓮の作品と、シャルル・サンディソンのビデオ作品、あるいはセザンヌの作品と、ベルトラン・ラヴィエの平面作品が特別に展示されていました。モネセザンヌのそれは、コレクションの作品と現代美術作家とのコレスポンダンスと題された企画のようです。コレスポンダンスCorrespondencesは、文通とか手紙という意味もありますが、ここではコレクションと現代美術作家との一致、照応を意味するのでしょう。ボードレールの有名な詩をここで思い出すべきかもしれません。しかし、このコレスポンダンスが、全く成功しているか否かは疑問かもしれません。それは、ファーブルの作品も同様です。現代美術作家の表現は最終的には、コレクションと調和することよりも、対抗してしまいがちなのではと思うからです。

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