2009/02/19

エッシェンバッハ指揮パリ管弦楽団 マーラー9番@サル・プレイエル


のだめカンタービレの千秋は、指揮者になりたいのだけど、そのために最初はピアニストとして一流を目指していた。昔はピアニストのイメージが強かったのに、今では指揮者のイメージの方が大きい指揮者として、バレンボイム、アシュケナージ、そしてエッシェンバッハの名があがるだろう。チョン・ミョンフンはチャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門2位(74年)だが、ピアニストとしての活躍は兄弟との室内楽に限られている。エッシェンバッハは、チェルニーなどの教則本の録音も有名なのだが、ポリーニみたいにピアノだけを極めるというわけにはいかなかった。そして今では、フィラディルフィア管とパリ管の指揮者として、多忙を極めることになる。そのエッシェンバッハとパリ管の契約は残り1シーズンのみとなったが、サル・プレイエルのリニューアルコンサートでマーラーの「復活」を演奏するなど、彼にとって思い入れの強い作曲家だ。昨夜、そのマーラーの9番交響曲の演奏会を聞いた。もともと、エッシェンバッハは、丁寧な楽曲分析をする指揮者で、時としてゆっくりとしたテンポになりがちなのだが、今回の演奏も同様で、いきなり打ちのめされた。おそらく現在この曲の第一楽章を、世界で一番ゆったりと演奏する指揮者であることは間違いない。あまりにゆったりとじっくりしているので、時計を気にしていていると、おおよそ34分近くかかっている。ちなみに、それ以降は計測して、第二楽章 16分4秒 第三楽章 12分48秒、 第四楽章 29分35秒 その後40秒ほど沈黙して拍手となった。これは情念たっぷりのバーンスタインの演奏時間よりもながいのだが、かといって重くない。デフォルメ感は強く、音の塊が崩壊しそうな緊迫感があるのだけど、それがねっとりしているのだ。しかし、そのねっとり感には嫌らしさがなく、どきどきしながら、その音と戯れることが可能だ。そして、最後に指揮棒を止めてから、会場からはフライングブラボーもなく、エッシェンバッハとパリ管のメンバーの呼吸が一息ついたところで、盛大な拍手となった。唯一無二のマーラーなのだ。

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